DeepRoute.aiのロボタクシー展開、その真意は?自動運転の未来をどう変えるのか。
中国・深圳を拠点とする自動運転企業DeepRoute.aiは、2025年末までに量産車ベースのロボタクシー事業を本格展開すると発表した。同社は自社で車両を製造せず、自動車メーカーと提携して自社の自動運転システムを他社車両に搭載するビジネスモデルを採る。同社によれば、この基盤技術は中国国内ですでに約15万台の量産車に搭載されており、2025年末までに20万台超に達する見込みだという(出典: PR Newswire「DeepRoute.ai to Launch Robotaxi Operations Using Consumer-Grade Production Vehicles by End of 2025」 https://www.prnewswire.com/news-releases/deeprouteai-to-launch-robotaxi-operations-using-consumer-grade-production-vehicles-by-end-of-2025-302601184.html )。
同社の実証実績としては、2021年7月に深圳・福田中央ビジネス地区で一般向けロボタクシーサービスを開始し、90日間で約2万件のリクエストを処理した実績がある。資金面では、2024年11月9日に長城汽車(Great Wall Motor)主導のシリーズC1ラウンドで1億ドルを調達したと発表しており、それまでの累計調達額は約4.5億ドル、2021年9月に完了したシリーズBラウンドは3億ドル規模だったとされる。アリババを含む複数の投資家からの累計調達額は5億ドルを超えるという(出典: The Robot Report「DeepRoute.ai closes $100M Series C1 led by Great Wall Motor」2024年11月 https://www.therobotreport.com/deeproute-ai-closes-100m-series-c1-led-by-great-wall-motor/ 、PR Newswire 前掲記事)。
技術面では、高精度地図のライセンス費用を不要にする「マップフリー」ナビゲーション技術と、エンドツーエンド(E2E)モデルおよびVision-Language-Action(VLA)基盤モデル(400億パラメータ規模)を量産車両に展開している。NVIDIAの車載半導体をベースにした開発も進めており、複雑な交通シナリオでの判断能力向上を目指しているという(出典: PR Newswire 前掲記事)。同社はメルセデス・ベンツと吉利汽車の合弁ブランドsmartをはじめとする複数の自動車メーカーとも提携している。
DeepRoute IOの研究開発強化に加え、グローバル自動車メーカーとの協業拡大、将来のロボタクシー事業の探求、AI人材の採用支援に資金を充てるとしており、欧州・日本・韓国への展開も進めているという。ラストマイル配送と同様、量産車への技術供給というアプローチは、自社で車両を保有せずに事業をスケールできる点で、資本効率の高いモデルといえる。
投資家にとっては、DeepRoute.aiのビジネスモデルが、自動運転技術のコモディティ化を前提にしている点が着目点になる。特定の自動車メーカーに依存せず、幅広いOEMに技術を供給する戦略は、リスク分散と市場拡大の両面で投資妙味があるとされる。技術者にとっては、高精度地図に依存しないE2E・VLAモデルの開発動向が、今後の自動運転技術の主流を占ううえで重要な指標になるだろう。
自動運転技術の量産車展開が進めば、運転手の雇用機会が減少する一方、車両設計・データ分析・AIモデルのチューニングといった新たな職種が生まれる。事故発生時の責任の所在や、収集される走行データのプライバシー保護、そしてサイバーセキュリティといった論点は、技術の実用化が進むほど社会的な議論として重要性を増していくことになる。
日本の自動車産業にとっても、この動きは無縁ではない。モノづくりの精密さや品質へのこだわりは、自動運転の乗車体験における差別化要因になり得る一方、中国勢が示す実証データの蓄積スピードと量産展開の速さには学ぶべき点も多い。規制環境の整備と、AI・ソフトウェア人材の育成をどう進めるかが、今後の競争力を左右するだろう。