Micas Networksの51.2T CPOスイッチ、AIインフラの未来をどう変えるのか?
Micas Networksが51.2Tのコパッケージドオプティクス(CPO)スイッチシステムの量産を2025年3月17日に開始したと発表した。AIモデルの学習・推論に伴うデータ転送量と消費電力の増大に対し、従来のプラグ可能な光トランシーバーでは限界が見え始めていた領域への回答として位置づけられる。
CPOとは何か
コパッケージドオプティクス(CPO)は、ASIC(特定用途向け集積回路)と光エンジンを単一パッケージ内で直接統合する光接続技術の一種で、従来のように両者を別々にパッケージする方式との違いを特徴とする。Micas NetworksのシステムはBroadcomとの戦略的パートナーシップのもとで開発され、Broadcomの51.2T Bailly CPOスイッチデバイスに、同社のTomahawk 5スイッチチップと8つの6.4-Tbpsシリコンフォトニクスチップレットインパッケージ(SCIP)光エンジンが直接結合されているという。
消費電力とレイテンシへの効果
CPOの核心的な利点は、従来の光トランシーバーで必要だったDSP(デジタル信号処理)が不要になる点にある。Micas Networksの発表によれば、同仕様の従来スイッチと比較して消費電力を40%から50%以上、光インターコネクトに限れば70%以上削減できるという。光と電気の距離が短くなることで信号遅延も低減され、GPUコンピューティング能力の利用効率向上にもつながるとされる。
システムは4RU設計で高効率の空冷を備え、128ポートの400G FR4接続を外部ファイバーで提供する。16個のRMモジュールは現場での交換に対応し、SONiCのようなオープンネットワークOSもサポートしているという。Micas Networksは自社工場を保有し、サプライチェーンを自社で構築しているとされる。
業界標準化とエコシステムの動き
CPO技術はMicas Networks一社にとどまらない広がりを見せている。NVIDIAはSpectrum-XプラットフォームでCPOを採用しており、Intelも自社製品での統合を進めているという。OIF(Optical Internetworking Forum)やCOBO(Consortium for On-Board Optics)といった標準化団体が、CPOのインターフェースや相互運用性に関する規格策定を進めている。
CPOと並ぶ選択肢として、ASICとの結合度がやや緩い「ニアパッケージドオプティクス(NPO)」も存在する。CPOほどの効率改善ではないものの、既存インフラとの互換性を保ちやすい点から、移行リスクを段階的に抑えたい企業にとっての選択肢になりうるとされる。
熱管理という技術的課題
ASICと光エンジンを密結合させることで熱密度が高まる点は、CPOに共通する課題である。Micas Networksは空冷での対応を発表しているが、将来的な高密度化や省電力化を目指す上では、液冷や、サーバー全体を誘電性の液体に浸す浸漬冷却といった、より高度な冷却技術との組み合わせが必要になる可能性がある。
投資家・技術者への論点
投資家にとっては、CPO市場の成長がシリコンフォトニクスチップレットの供給元、パッケージング技術を持つ企業、冷却ソリューションベンダーなど関連するサプライチェーン全体への波及効果を持つ点が注目点になる。技術者にとっては、光ファイバーの配線がASICのすぐ隣まで引き込まれることによる設計・診断・トラブルシューティング手法の変化、ソフトウェア定義ネットワーク(SDN)との連携などが、新たに求められる知見として挙げられる。
まとめ
結論として、CPOはAIインフラにおける電力とレイテンシのボトルネックに対する具体的な解決策の一つである。重要なのは、Broadcomとの連携にとどまらず、NVIDIAやIntelを含む業界全体でCPO技術への投資が進んでいる点で、標準化団体による相互運用性の確保が市場拡大の鍵を握る。ハイパースケーラーなど電力コストとパフォーマンスに敏感な事業者から先行導入が進み、その後エンタープライズ領域へ広がるかが今後の焦点になる。